ピアノ教室の思い出

ピアノ教室の思い出

小学校低学年の頃からピアノ教室へ通い始めました。
私はかなり不真面目な生徒で先生を手こずらせたと思います。
中学二年生まで同じ先生についてピアノを習いました。四半世紀以上前の話です。

とても厳しい先生で、間違えたりミスタッチをすると、容赦なく手を叩かれたり、強い口調で叱られました。
最初は楽しいと思っていたピアノが段々面白くなくなっていき、次第にやめたいと思うようになりました。
しかし親はやめさせてくれません。練習が足りないと怒られ、強制的に練習をさせられ、更にピアノが嫌いになっていきました。
親もピアノの先生も厳しく、ピアノが大嫌いなのに続けなければいけないジレンマで胸が張り裂けそうでした。
そんな時、姉が難関と言われる音大に合格しました。
当時、信号機も無いような田舎に住んでいましたので、姉の大学合格はあっという間に知れ渡り、なぜか私が通う中学校の音楽の先生まで知っていました。
その先生はその年に転任してきたばかりの中年の女性で、合唱指導に力を入れていました。
その頃、思春期真っ只中の私たちは、音楽の時間に大きな声で歌うのは恥ずかしいことだと思っていたのですが、
指導力のあるその先生は、赴任してすぐに合唱の素晴らしさを唱え始め、あっという間に私たちを合唱コンクールに出場させるまでに成長させたのです。
その影響力のある先生が、「あなたのお姉さん、あの音大に受かったんだってね。凄いわね!」と声を掛けてきたのです。

それを聞いていた周りのクラスメートも、よく分からないけど凄い事なんだとざわめき、そこでふと、今まで伴奏に立候補しなかった私に対し、
「○○ちゃんはピアノ習ってないの?」という当然の質問をぶつけてきました。
ピアノに苦手意識を持っていた私でしたが、そこで嘘をつくわけにもいかず、「一応……習ってるよ」と言うと、それを聞いた音楽の先生に伴奏を命じられてしまいました。
その時、正直に言ってしまった事を後悔しましたが、時すでに遅し、です。
私はその時初めて、必死にピアノと向き合う羽目に陥りました。
ピアノなんかやめたいし大嫌いだと思っていたのに、クラスメートの前で恥をかくのだけは本当に嫌だと思い、姉が使わない時間を利用して何度も何度も練習しました。
そして音楽の授業で初めて披露となったのですが……緊張のあまり上手く弾けませんでした。
「どうしたの?」「下手じゃない?」という声が聞こえます。
私は家でもっと練習しました。そして何度も音楽の授業で伴奏をする内に、自在に弾きこなせるようになっていきました。

学期末、その曲で音楽の歌のテストが行われました。
私はクラスメート全員分の伴奏をし、最後に先生から「あなたは伴奏をしたから歌のテストは免除します」と言われ、
クラス全員からの万雷の拍手を貰いました。
この時です。ああ、あんなにも嫌だったピアノをやめなくて良かったと思ったのは。今となっては良い思い出です。

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